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特別企画: ノーベル賞候補者リスト!

というわけで、いきなりですが、特別企画 (夏休みの自由研究w) です。

「ノーベル賞候補者たちの偉大な業績を知り、科学全般について見聞を広めよう」
…という趣旨でやっていきたいと思います。 よろしければお付き合いください。

今年の受賞者発表、および過去の受賞者リストなどは、ノーベル賞公式ページ からどうぞ。


物理学賞 前編

物理学賞 後編

化学賞編

医学・生理学賞編

経済学賞・文学賞・平和賞編 (現在リストのみです)


記述に誤りなどありましたら、コメント欄等で教えていただけるとうれしいです。よろしくお願いします。
# by jazz-photonic | 2006-10-01 00:00 | Science
特別企画: ノーベル賞候補者リスト!(物理学賞 前編)

物理学賞 前編です。他の賞へは、こちら からどうぞ。


小林誠、益川敏英

弱い相互作用によるクォークの世代混合の理論を提唱(カビボ・小林・益川行列)。その中で、クォークが3世代・6種類あれば、「CP対称性の破れ」が(自然に)生じうることを初めて示しました。本理論の提出後、加速器実験により、「チャームクォーク」(1974年)、「ボトムクォーク」(1977年)、「トップクォーク」(1994年、近藤都登ら)が相次いで発見され、クォークが(少なくとも)3世代、6種類存在することが、実験的に示されています。
また、原論文(PTP,1973)の被引用回数は5000回に近く、現代の素粒子理論に極めて大きな影響を与えたことが分かります。すごいですね。

実はお二人ともに講演を聴いたことがあるのですが、益川氏は小柄ながら濃いキャラで、天才肌、小林氏はすごく真面目な秀才肌、といった感じを受けました。だからどうということもないんですけど(笑)。


南部陽一郎

素粒子論における「(ゲージ)対称性の自発的破れ」を初めて理論的に提唱。量子色力学(「カラー」自由度の導入)、ヒッグス粒子(Nambu-Goldstone boson)の分野で先駆的な研究を行った方です。また、ハドロンのひもモデルの最初の提唱者であり、「弦理論」の発端を与えた人でもあります。Nambu-Goto 作用 とかも有名ですね。なるべく早く受賞してもらいたいです。


Michael B. Green, John H. Schwarz, & Edward Witten

弦理論、M理論の大物三人。トムソンISI 「2005年ノーベル賞の有力候補者」 にこの3人が挙げられていました。物理学に与えた影響は甚大ですが、実験的な検証が出来ないのが難点ですね。その意味では、ノーベル賞はまだ難しいのかもしれません。

因みに、ウィッテンさんは藤原正彦さんと対談したときに、弦理論に関して、「数学的にあんなに美しいから、それが嘘のはずはない。神様が必ずこの宇宙をこういうふうに創っているはずだ」 と言っていたのだそうです(「世にも美しい数学入門」 p.122)。気持ちはすごく分かりますが…、うーんと、なかなか難しいですね。


Albert Fert & Peter Gruenberg

巨大磁気抵抗効果(GMR)の発見者。この現象、原理として面白いだけではなく、磁気ヘッドに応用されてハードディスク記憶容量の大幅な向上に貢献し、僕たちの日常生活にも非常に大きな影響を与えました。その意味でも、文句なしに受賞されるのではないでしょうか。


十倉好紀

言わずと知れた、物性物理の第一人者。高温超伝導物質の一般則 (Tokura Rule)の発見、酸化物巨大磁気抵抗(CMR: Colossal Magneto-Resistanse)の発見と機構解明など、素晴らしい成果をたくさんあげていらっしゃいます。現在でも「強相関系酸化物」の研究などで世界をリードされていますね。

研究室見学に行ってお会いしたことがあるのですが、すごく良い先生でした。他の先生方によると、「すごく頭の切れる人」なんだそうです。あと、「強相関電子と酸化物」はマジで名著。…ノーベル賞、ぜひ取って欲しいです。

因みに、今年のFNS26時間テレビで 「十倉好紀は、日本を代表する物理学者である。○か×か?」 というクイズが出題されたんだそうです(RBB Today)。 何というか…ある意味考え込んじゃいますね(笑)。


大野英男

スピントロニクス研究の先駆者の一人。III-V族化合物半導体をベースとした「強磁性半導体」の創製で特に有名です。(In,Mn)As用いたFET において強磁性転移温度を電場で変化させることに成功するなど、「強磁性体」と「半導体」の融合領域を開拓されています。


中村修二

GaNを用いた青色発光ダイオード、青色半導体レーザーの実現。日亜化学時代、「ツーフローMOCVD」を開発し、GaNの膜状良質結晶の成長に成功。産業へのインパクトは甚大であり、ノーベル賞受賞は時間の問題か。

「世界で一番になってみると、自分の前にだれもいない。まるで宇宙旅行をしている感じだった」
 (by 中村修二、読売新聞科学部 「日本の科学者最前線」より)。

赤﨑勇天野浩氏との共同受賞かな? 事情通の方の情報をお待ちしています。


西澤潤一

「ミスター半導体」の異名を持つ、日本の電子工学の雄。光通信の基本となる「半導体レーザー」「光ファイバー」「受光素子」の3要素の考案をはじめ、数々の独創的技術を開発。このため、「光通信の父」とも呼ばれています。 科学と現実社会の「近さ」は、いまや相当なものですね。特に「光ファイバーの発明」は、圧倒的な業績だと思います。

ただ、西澤氏が高校の指導要領改定にあたる会議で「自分は数学を知らないし、それでもちゃんとトランジスタと光通信に関するすべての発明をした」という趣旨の発言をしたという話(「科学」 2002年11月号)を読んで以来、実はちょっと微妙な感慨を抱いています(すいません)。もちろん業績の素晴らしさが損なわれるわけではないのですが…。和達三樹氏の「だからファラデー的人間もマクスウェル的人間も認めると言うのならいいが、マクスウェルはいらない、ファラデーだけ必要というのはすごい論理だ」という発言に溜飲を下げた記憶があります。


大見忠弘

ウルトラクリーンテクノロジーや知的情報処理システムの研究などで国際的に有名な電子工学者。Intel のプラントデザイン(1987-89)に関わり、そこでの技術指導が90年代におけるIntel の大躍進の原動力になった、と評価されているのだそうです。 因みに、論文数は2000報、特許は何と1800件(!)お持ちです。…割り算するのが怖いくらいですね(笑)。

「理想の姿、極限の姿から現状を見ると、何を研究すべきかが鮮明に見えるのです。」
 (by 大見忠弘、有馬朗人監修 「実学の超研究術」 より)


江崎玲於奈

「人工超格子」の概念の提唱に対して。1973年のノーベル賞は Esaki diode について与えられましたが、「人工超格子」の方でも授賞の可能性があるようです。確かにいまや基本的な概念として定着してますもんね。


林忠四郎

日本の理論宇宙物理学の先駆者。ビッグバン後の「軽い元素」の合成過程をを精密な計算により理論立て、ビッグバン宇宙論(Gamov)に対する重要な補強を与えた(α-β-γ-林の理論)こと、また、恒星が主系列星となる前に非常に明るく輝く時期(「林フェーズ」)があることを明らかにしたことなどで有名。佐藤勝彦も、佐藤文隆も、池内了も、みんな林研の門下生なんだそうです。


佐藤勝彦、Alan H. Guth

インフレーション理論(宇宙のごく初期(ビッグバン以前)に0Kの高エネルギーの真空があり、そこから宇宙が指数関数的に膨張したとする理論)の提唱者。WMAP の観測により、実験的にもある程度のサポートが得られてきているようです。 トムソンISI社の予想では、Guth, Linde, Steinhardt の3名が挙げられています(Dirac Medal もこの3人)が、どうなるんでしょうね。


佐藤文隆冨松彰

Einstein方程式における、Tomimatsu-Sato 解の発見(1972年、富松氏は当時25歳の大学院生)。Einstein方程式の厳密解のひとつですが、この解の示す「裸の特異点」の存在は今のところ確認されておらず、物理的な実在を記述するものかどうかは不明のようです。


Sir. Michael Berry

Berry phase (系のハミルトニアンがもつ外部変数を断熱的に変化させたとき波動関数に生じる幾何学的な位相) の Berry。 …これは幾らなんでも取らなきゃおかしいですよね。


Yakir Aharonov

Aharonov-Bohm effect の理論的予言(Bohm 氏は既に亡くなっています)。ゲージ不変性の要請から、電子が電場・磁場がなくても電磁ポテンシャルの影響を受けること(つまり、電場・磁場よりもスカラーポテンシャル・ベクトルポテンシャルの方がより基本的)が導かれる、という深遠な結果です。Hamiltonianに電場・磁場それ自体が現れず、電磁場が「ポテンシャル」の形で入っているのもこのためで、AB効果がいかに基本的なものかがよく分かりますね。またこの効果は、"Berry phase" (上述) の最も重要な例でもあります。

関係ないですが、猪木・川合 「量子力学II」 を読んだとき一番感動したのが、このAB効果の所でした。その意味でも、個人的にちょっと思い入れがあります。


外村彰

ホログラフィー電子顕微鏡の第一人者。AB効果の実験的検証により、ベクトルポテンシャルが物理的な実在であることを証明。「二重スリットによる電子の干渉」(ファインマン量子力学の第1章 "Quantum Behavior" 参照)を、実験的に(視覚的に)示したことでも有名です。 まさに、"The Most Beautiful Experiment" ですね。

「AB効果」で、Berry, Aharanov と共同受賞となればうれしいのですが…。


戸塚洋二

スーパーカミオカンデにおける、ニュートリノの質量の存在およびニュートリノ振動(量子状態の混在により、電子ニュートリノ・ミューニュートリノ・タウニュートリノの間での変化が起こる現象)の観測に対して。標準理論ではニュートリノの質量をゼロとしているため、その書き換えを迫る意味できわめて重要な実験結果であると思われます。「陽子崩壊」の方は、どうなるんでしょうね。これが見つかったら、文句なしで受賞しそうですが。


小田稔 (1923-2001)

X線天文学の権威。「すだれコリメーター」の発明(1966)により、X線源の精密な位置決定を可能にしたことで有名。また、X線天文衛星「はくちょう」(1979年~1985年)、「てんま」(1983年~1989年)、「ぎんが」(1987年~1991年)、そして「あすか」(1993年~) の打ち上げにも深く関わり、X線天文学を「日本のお家芸」と言われるまでに成長させました。2001年3月1日に死去。「あすか」が後を追うように大気圏で燃え尽きたのは、その翌日のことだったのだそうです(訃報@アストロアーツ)。


David N. PayneEmmanuel Desurvire中沢正隆

エルビウム添加ファイバー増幅器(EDFA) の開発により、光ファイバー通信の高速化に革命的な進歩をもたらした方々。トムソンISI の予想で一気に有名になりましたね(僕もこれで初めて知りました)。

このEDFAの発明以前は、光を増幅する際、optical-electrical-optical という変換(光電変換)をいちいちしなければいけなかったのが、本発明により「直接的に」光を増幅することが出来るようになったんだそうです。この「光の増幅」というのは、光によって長距離の通信を行う場合に必須となる技術で(だって光が減衰して消えてしまっては、情報通信どころじゃないですからね)、その高速化・低コスト化は現代の光ネットワーク社会の基礎を与えたといっても過言ではないと思われます。その意味では、ものすごく身近な技術発明ですね。

因みに増幅には、ドープした希土類イオン(この場合はエルビウム)による誘導放出を利用しているのだそうです(参考:光アンプの原理)。そういえば大学院の無機の授業で勉強したなあ…、と今ごろ思い出しました。反省。


松波弘之

ステップ制御エピタキシャル成長技術によるSiC単結晶膜の作製およびそれを用いたダイオードの実現他、SiC(シリコンカーバイド)を用いた半導体・デバイスの分野を常に先導されてきた方です。

SiCは、「ワイドギャップ半導体」としてよく知られています。Si に比べ絶縁破壊電界強度が約10倍、熱伝導率が約3倍と優れた物性を有しており、また(ギャップが大きいため)可視光線を取り出せるという利点もあります。しかし、そのデバイス化のためには高品質の単結晶が必要であり、結晶成長の問題が一番のハードルとなっていましたが、松波教授はこれを「ステップ制御エピタキシャル成長技術」により解決し、そのデバイス化に向けた進歩の基礎をつくられました。因みに、SiCの動作上限温度は400~500℃(Si は約200℃)、電力損失はSi の1/100 だそうで、特にパワーデバイス関連で応用が期待されています (BEST MIX vol.42 参照、※pdf が開きます)。

また関係ない話ですが、松波先生は現在研究成果活用プラザ京都の館長をされていて、朝早く大学に行くと、ときどきすれ違うことがあります。お話したことは(もちろん)ないのですが…、ちょっとだけ身近なのです(笑)。


野田進

光の波長域で機能する「フォトニック結晶」(光の波長と同程度の周期的な屈折率変化を内部に有する固体材料、フォトニック超格子とも呼ばれる)を世界に先駆けて実現。photonic bandgap の制御 (「欠陥」の導入etc.)により、光の自然放出の抑制(「光の閉じ込め」)、単一モード発光、光導波路の形成等が可能となり、近未来の光技術社会に革新をもたらす成果になりうると考えられます。いつかは取りそうですね。


John Stewart Bell (1928-1990)

「Bell の不等式」 のBell です。この不等式は、「古典的(局所)実在論を捨てない限り、(因果律を破らないでは)決して説明できない自然現象が存在する」ということを示しており、科学における「最も深遠な結果」と言われることも少なくないそうです。「自然現象を相手にする限り、古典的世界観(実在論)からの決別が必須である」ことを示してしまったわけですもんね。量子論は真の革命だったということですね。

詳細は、清水明 「量子論の基礎」 (超お薦めの名著!)を参照してください。この不等式が、いかに深遠な結果であるかがよく分かります。 …ノーベル賞を受賞される前に亡くなられてしまったようで、残念ですね。


井上明久

バルク金属ガラスの発見(1988)、金属ガラス作成のための「井上の3経験則」の提唱、最強度のマグネシウム合金の開発など、金属材料科学・非平衡物質工学の分野で世界のトップを走る研究者。論文数、被引用件数ともに日本最強クラス。材料科学の分野でひとつの大きな分野を切り拓いたわけで、日本の(東北大の?)材料研究のレベルの高さが伺えますね。


Hugo Rietveld

「Rietveld 法」の開発。粉末試料による結晶構造解析や多相混合物の"phase analysis" などに広く使われています。ある意味、材料開発自体よりも基礎的な研究成果だと思うし、その波及効果もかなり大きくなってきている気がするので、そろそろ取ってもおかしくないんじゃないかなあ…と思ってます。


# by jazz-photonic | 2006-09-30 23:59 | Science
特別企画: ノーベル賞候補者リスト!(経済学賞・文学賞・平和賞編)

「経済学賞・文学賞・平和賞編」です。 他の賞へは、こちら からどうぞ。


経済学賞

以下の紹介は、主に Wikipedia を参考にしています (Wikipedia: 経済学者)。
本質が全然分かっていないのでかなり表面的な紹介になりますが、ご容赦くださいね。

「手鏡学」なら具体的にイメージできるんだけどなあ…(笑)


藤田昌久

Paul Krugman らと共に、「空間経済学」(特定の土地に於ける産業の集積や都市の形成に関する研究)の発展に貢献。「規模の経済」などの概念は、現実との関わりも深そう。 主著は、M. Fujita, P. Krugman and A. J. Venables "The Spatial Economy" (1999)。 かなり新しい分野みたいですね。


森嶋通夫 (1923-2004)

ワルラス・マルクス・リカード等の理論の動学的定式化で有名な数理経済学者。特にワルラスの一般均衡理論に関する研究、およびマルクス理論の数理化の業績で名高い。


置塩信雄 (1927-2003)

マルクス経済学の基本定理を数理化。「思想」を「科学」に引き戻した、って感じなのかな。
響きが理系の知識欲をそそりますね(笑)。


宇沢弘文

新古典派の成長理論を数学的に定式化した他、「二部門成長モデル」や最適値問題の「宇沢コンディション」などを提唱した世界的に有名な数理経済学者。


清滝信宏

マクロ経済学、金融理論の権威。具体的な業績は…今度分かったら書きます(笑)。すいません。


雨宮健

計量経済学の権威。「2000年にノーベル経済学賞を受賞したマクファーデン、ヘックマンの個人と家計の消費行動に関する実証研究は、雨宮氏の理論に基づくものであった」…のだそうです。


伊藤清

確率微分方程式論 (Ito Calculus) の創始者。特に 「伊藤の補題」 および 「伊藤の公式」 が数理ファイナンスなどに与えた影響は極めて大。これらの業績により、「ウォール街で最も有名で尊敬されている日本人」と言われているのだそうです。数学の力は偉大ですね。


岩井克人

貨幣論、不均衡動学で有名。主著は、"Disequilibrium Dynamics -- A Theoretical Analysis of Inflation and Unemployment"。リンク先からDLできるみたいです。


神取道宏

経済学に進化ゲームを取り入れた草分けの一人。


青木昌彦

日本を代表する理論経済学者。特に 「比較制度分析」 に関する業績で世界的に有名。


根岸隆

日本を代表する理論経済学者。全ての消費者の効用関数を内生的な個人重要度(所得の限界効用の逆数)で加重して集計した「社会厚生関数」の最大解と「完全競争均衡」との同値性を発見・証明(1960)した業績で特に有名なんだそうです。何かすごい話ですね。


ええと… とりあえず経済学の歴史を勉強しよう! 分からないことばかりなので、勉強のし甲斐があります(笑)。



文学賞


・ 村上春樹





平和賞


・ 緒方貞子

・ Bono (U2)


# by jazz-photonic | 2006-09-30 23:59
特別企画: ノーベル賞候補者リスト!(化学賞編)

化学賞編です。他の賞へは、こちら からどうぞ。


飯島澄男

1991年、カーボンナノチューブ(CNT)を発見。その後の爆発的な研究の発端となりました。現在も、FEDへの応用(齋藤先生@名大他)などが盛んに研究されており、社会へのインパクトも今後ますます大きくなっていくと思われます。もちろん基礎研究も、片浦先生はじめ多くの方々によって行われており、チューブ径に依存した物性変化など多くの興味深い現象が明らかになっているようです。ノーベル賞は時間の問題でしょうか(化学賞かは分かりませんが)。

なお飯島教授は、CNTの発見以外にも、ニオブ酸化物結晶中の金属原子の直接観察、結晶中の点欠陥の原子レベルの分解能での撮影、孤立タングステン原子の撮影、金の原子がアメーバのように動く金超微粒子の「構造ゆらぎ」現象の発見など、「電子顕微鏡のプロ」としてさまざまな成果をあげられているみたいです。 それにしても、「孤立原子の撮影」って…すごいな。電顕恐るべし。

あと、最近ではむしろ「ナノホーン」の方に注目されているみたいです。吸着剤としてけっこう優れているようです。


遠藤守信

化学的気相成長法によるCNTの大量生産技術を開発。「遠藤ファイバー」と呼ばれるこのCNTはリチウム電池などに使用されているほか、電子デバイス等多くの分野で注目を集めている(Wikipedia: 遠藤守信)…のだそうです。因みに信州大の友達によると、毎年ノーベル賞発表の時期にはマスコミがたくさん集まってくるらしいです。なるほど…やっぱり有力候補なんですね。

ところで、上のリンク先に 「1988年、遠藤ファイバーと呼ばれる直径10nm~100nmの多層カーボンナノチューブの商業化が始まった」 とあるんだけど…それでも飯島澄男が発見者ということでいいのかな? うーん、よく分かりません。事情通の方の情報をお待ちしています。


新海征治J. F. StoddartG. M. Whitesides

分子機械、分子自己集合体に関する先駆的な研究に対して。トムソンISIによる予想(2005年)でこの3人が挙げられていました(参考: ケムステニュースの記事)。

新海先生は、「分子機械」および「分子認識」の研究の第一人者。1979年にクラウンエーテルとアゾベンゼンを組み合わせて世界初(?)の分子機械を合成、同定しました。その後も、分子認識、有機ゲル、無機物質への構造転写などの研究で世界をリードされています。
この前、特別講義を聴きましたが…なかなか「濃い」先生でしたw。やっぱこのくらいじゃないと駄目なのかなあ、と思った次第(笑)。

Stoddard 教授 は、分子認識および自己集合をうまく利用して、catenanerotaxane などの複雑な超分子を効率的に合成する手法を見出し、その後の「分子機械」「分子モーター」などの研究に大きく貢献された方です。もちろん現在も活躍されており、Nature-Science の常連のひとりですね(あのNMRの解析を見るといつも目が眩みますw)。 この分野から出るならやっぱりはずせないかなあ、という感じでしょうか。

Whitesides 教授 も、超有名ですね。チオール基を利用した単分子膜(SAM)形成技術、ソフトリソグラフィー法をはじめ、有機分子の自己組織化による膜形成技術(デバイス化に非常に重要)に道をつけた方です。上のリンクをみれば分かるとおり、現在も非常に広い分野で活躍されています(ちょっとありえんくらいですねw)。とにかく、受賞は確実だと思います。間違いなく。

この分野で他に有名な日本人というと、藤田誠北川進相田卓三、…といったあたりでしょうか。そういえばこの前インド人のポスドクさんが 「Susumu Kitagawa と Makoto Fujita はいつかノーベル賞を取るんじゃないか」 と言ってはりましたが…。どうなんでしょうね。 有り得なくはない、のかな。


熊田誠玉尾皓平Robert Corriu

触媒的クロスカップリング反応の発見(1972)。最初は、Grignard 試薬とNi 触媒の組み合わせだったんですね。今はこの「熊田-玉尾-Corriu カップリング」自体を使うことはあまりないかもしれませんが、その後の一大分野の形成の礎を築いたという意味で、とても素晴らしい業績だと思います。

なお、玉尾先生はこの他にも「玉尾酸化」(炭素-ケイ素結合の過酸化水素酸化による切断)や「シロール誘導体の合成」など、ケイ素化学を中心に大きな成果をたくさんあげていらっしゃいます。こちらも有名ですね。

あと、関係ないですが、学部のときに受けた玉尾先生の「有機化学III」の講義は最高に面白かったです。
「化学は面白いですから」 (by 玉尾皓平) …とか、今でもよく憶えてます。(といっても3年前なんですがw)
教育者としてもとても優れた人だと思うので、そういう意味でもぜひ受賞してもらいたいと思っています。


鈴木章、宮浦憲夫

Suzuki-Miyaura Coupling (塩基存在下、Pd 触媒により芳香族ホウ素化合物とハロゲン化アリールとをクロスカップリングさせる反応)の開発(1979-)。水や空気に安定で毒性の低いホウ素化合物を用いるため、世界で最も広く使われているクロスカップリング反応です。特に液晶、有機EL材料などの合成、医薬品合成、天然物の全合成(パリトキシンなど)など、実験室レベルから工業レベルまで、極めて広く応用されています。
特別企画: ノーベル賞候補者リスト!(化学賞編)_b0078447_1365226.gif
(図は、有機化学美術館より引用。鈴木カップリングについての非常に分かりやすい解説があります。)

クロスカップリング反応には、他にも、Negishi couplingHagihara-Sonogashira couplingMigita-Kosugi-Stille couplingHiyama couplingNozaki-Hiyama-Kishi (NHK) reactionMizorogi-Heck reaction …などいろいろありますが(こうしてみるとやっぱり日本人多いですね)、有機反応を「使う」立場から言うと、やっぱり鈴木-宮浦カップリングが(今のところ)ベストなのかな、と思います。

そういえば、ちょっと前のScience にアリールカルボン酸を使ったカップリング反応が出ていましたが、あれはどうなんでしょうね。もし汎用性があったらすごいと思いますが…。


・ 辻二郎、Trost


Kyriacos Costa Nicolaou

言わずと知れた、生理活性天然物の全合成研究の権威。おそらく世界で最も有名な現役化学者(のひとり)ではないでしょうか。Taxol の全合成では、Holton らに僅差で(?)先を越されてしまった(有機化学美術館:「タキソール~全合成のドラマ~」より; 僕はてっきりNicolaouの仕事だと思ってました…)ようですが、他にも VancomycinBrevetoxin (赤潮毒の一種)の全合成など有機化学の金字塔とも言える成果をたくさん産み出されています。次は Maitotoxin を狙っているらしいですが…いやはや、すごいですね。

参考: "Nicolau Taxol Total Synthesis" (Wikipedia) ←何かすごい事になってますよ(笑)。


岸義人

海洋天然物などの全合成研究の権威。特にPalytoxin の全合成(1989,1994) はあまりにも有名(化学に関わる人間でこの成果を知らない人は皆無でしょう)。まさに "the greatest synthetic accomplishment ever" ですね。いやー、これは洒落にならない(笑)。神。

特別企画: ノーベル賞候補者リスト!(化学賞編)_b0078447_22212065.jpg

岸教授は、他にも Tetrodotoxin (フグ毒)、Mitomycin C (抗がん剤)などの全合成によって世界的に知られています。「全合成」の分野から今ノーベル賞が出るなら、前述の Nicolaou 教授 や Steven V. Ley 教授 (TPAP酸化などの開発でも有名…らしいです) などと共に、はずせない一人でしょうね。

しかし、こういう研究って…いったいどれくらいの人が関わってるんでしょうね? プロ級の合成化学者がたくさん育ちそうではありますが…。


中西香爾

天然化合物の構造決定および機能解析(構造生物有機化学)の権威。IRやNMRなどの物理化学的分析法を積極的に導入し、Ginkgolide (イチョウ葉の成分)やBrevetoxin (赤潮毒の一種、後にNicolaou らにより合成された)など200以上の化合物の構造を解明。また、自らも光学活性体の絶対立体配置決定法(エキシトンカイラリティ法)などを開発され、天然物の立体構造研究に大きな貢献をされました。視覚の研究(ロドプシンの構造変化)でも有名ですね。

因みに中西先生は、80歳を過ぎた今でも現役でご活躍されているようです(コロンビア大学、中西研)。 化学が好きでたまらないんでしょうね…すごいなあ。


Gilbert Stork

Storkエナミン反応 (ketone の α,β-不飽和カルボニルへの付加反応) を開発。学部の教科書に載ってるくらいの反応なので、ノーベル賞をまだ取っていないと知ってけっこうビックリしました。懐かしいので挙げておきます(笑)


向山光昭

有機合成化学(特に新規反応開拓)の権威。特に向山アルドール反応 〔silyl enol ethers と ルイス酸触媒(四塩化チタンなど)を用いたアルドール付加反応〕 の開発で世界的に有名な方です。また、新規反応の開拓だけでなく、Taxol の全合成(上述)などにも成功されています(世界で5例目、なんと5年で達成)。

向山研は超ハードワークぶりでつとに有名ですが(笑)、その門下からは(光延旺洋氏をはじめ)非常に多くの有機化学者が育っており、まさに「日本有機化学界の父」とも言うべき存在なのだそうです(参考: Wikipedia)。

「絶対にできるんだ、というスピリットを身につけさせるのが僕の仕事」 …なるほど!


David A. Evans

有機合成化学(特に新規反応開拓)の権威。Evans アルドール反応 〔キラル補助基をもつ求核剤を用いた不斉アルドール反応〕 の開発で特に有名です。その他、Mislow-Evans 転位の発見、bis-oxazoline 配位子(BOX)を用いた触媒的不斉反応の開発、などの業績でもよく知られているそうです。なお、トムソンISIの予想では、Steven V. Ley 教授とともに候補に挙がっていました(参考: ケムステニュースの記事)。どうなるんでしょうね。


澤本光男

リビングカチオン重合(ルイス酸触媒によるカチオン精密重合)およびリビングラジカル重合(遷移金属触媒によるラジカル精密重合)を世界で初めて達成(日本人の有機化学系論文で被引用件数第一位; 確か3000回強?だったかな)。ともかく、すごくシンプルで強力な成果だと思います(学部の授業で聞いてもまったく違和感が無かった)。原理はシンプルなほど良いですよね。

一般的な候補かは分からないけど、授業も分かりやすくてわりと好きな先生なので、ぜひノーベル賞でもなんでも取ってもらいたいです。 後期の「高分子生成論」も楽しみ。


Krzysztof Matyjaszewski

Atom Transfer Radical Polymerization (ATRP; フリーラジカルを成長種とするリビングラジカル重合)の開発。本当に「ノーベル賞候補」かは知りませんが(笑)、世界が広がるかもしれないので一応挙げておきます。


Walter Kaminsky, Tobin J. Marks, Maurice S. Brookhart

olefin 重合のための触媒/助触媒開発の第一人者たち。

W. Kaminsky: olefin 重合における "Kaminsky 触媒" 系(4族メタロセン型触媒+助触媒 MAO)の開発。

T. J. Marks: olefin 重合用新規助触媒開発の第一人者。[BPh4]-などの非配位性の陰イオンを助触媒として入れることによってMAO同様な効果が得られることを発見。ランタノイドを用いたメタロセン型触媒などもされているそうです(参考: ケムステニュース←大部分を参考にさせていただきました)。

M. S. Brookhart: olefin 重合における「ポストメタロセン触媒」を世界で初めて開発。メタロセン触媒では作れない構造のpolyolefinを多数合成可能としました。


岡本佳男

らせん構造を有する光学活性ポリマーを世界で初めて合成した、らせん高分子研究の第一人者。極性モノマーの立体規則性ラジカル重合に関する研究でも有名。そして、何と…「光学分割カラム」の開発者! 医薬業界では既に不可欠な「あたりまえ」の技術になってるはず。かなりびっくりしました…。2001年には、"chirality medal" も受賞されています(他の年の受賞者も錚々たる顔ぶれですね)。むべなるかな。


本多健一藤嶋昭 (+ 橋本和仁?)

本多-藤嶋効果(酸化チタンにそのバンドギャップ以上の光を照射することにより、水が水素と酸素に分解する効果)の発見およびその応用研究により、「光触媒」研究という一大分野を創出。特に酸化チタンは、その強い酸化力や超親水作用を利用して、各種抗菌剤・消臭剤・コーティング剤などとして一般に広く利用されています。「光触媒」でGoogle検索すると、それがよく実感できます(笑)。


Frederik Sanger

RNA の配列決定法の開発に対して。リンク先にあるように、史上初の3度目のノーベル賞受賞に最も近い研究者と言われています。やはり 「方法の開発」 ほど学問へのインパクトは大きいみたいですね。


井口洋夫松永義夫

赤松秀雄氏(1910~1988)との共著論文において「有機半導体」の概念を世界に先駆けて提唱(1954年; ぺリレン-臭素系「電荷移動錯体」)、現在隆盛をきわめる「分子エレクトロニクス」の先駆となりました。既に導電性高分子にノーベル賞が出てしまってるけど、より基礎的な成果として受賞もありうるかもしれません。

因みに「電荷移動錯体」としてもっとも有名な "TTF-TCNQ" は、1973年に発見されています(Ferraris, Cowan, Walatka & Perl-stein, 1973; Coleman, Cohen, Sandman, Yamagishi, Garito & Heeger, 1973)。


Denis Jérome, K. Bechgaard

有機超伝導体 (TMTSF)2PF6 を世界で初めて発見。有機伝導体研究の爆発的な発展の原動力となりました。超有名な成果ですが…どうなんでしょう? 参考: "D. Jerome のところに Bechgaard が送った、最初の有機超伝導(TMTSF)2PF6 のサンプル" の写真 ← おお~!


分子磁性体関連

有機強磁性体に関する先駆的研究: 伊藤公一氏による多重項カルベンの発見、岩村秀氏らによる合成高スピンカルベンに関する研究、木下實氏らによる世界初の有機強磁性体の発見(1991年;ニトロキシル系)など(参考: 特定領域「分子スピン」)。
(転移温度が低すぎるなどの理由で)おそらくこの分野からの受賞は無いかなと思いますが、「有機強磁性体」研究という領域が拓かれたことはとても重要なことだと思います(何か生意気な書き方ですが…すいません)。

錯体磁性体の方は、Oliver Kahn が亡くなってしまったから難しいのかな。J. S. Miller による ferrocene-TCNE 系とかも有名ですが…どうなんでしょう?
むしろ基礎的な見地からは、「単分子磁石」 の方が画期的だったのかもしれませんね。受賞したらびっくりですが…。



# by jazz-photonic | 2006-09-30 23:59 | Science
特別企画: ノーベル賞候補者リスト!(物理学賞 後編)

物理学賞 後編です。他の賞および前編へは、こちら からどうぞ。


Peter Ware Higgs

素粒子の「質量の起源」に関する「対称性の破れ」の理論の提唱。「Higgs 場」(インフレーションが終わり、有限の温度を持つようになった宇宙初期の場。「弱い力」と「電磁力」の分岐、およびクォークやレプトンへの質量の付与などが起こると考えられている)、「Higgs 機構」「Higgs 粒子」…のHiggsです。標準理論に組み込まれているほどの重要な成果なので、LHC とかで ヒッグス粒子が見つかり次第、即座に受賞ということになるのかな。


John Archibald Wheeler

S matrix の導入、核融合の理論、ブラックホール物理学("blackhole"の命名者)、量子重力理論 (Wheeler-DeWitt方程式 など) で有名な理論物理学界の巨匠。

弟子には何と、R.P. Feynman, K. Thorne, H. Everett などがいるそうです。…まさに "living history" ですね。個人的には、S-matrix を導入した人がまだ生きているというのが驚きでした(笑)。因みに一般相対論の「電話帳」の著者(のひとり)としても有名です。


近藤淳

近藤効果(磁性不純物を含む金属における電気抵抗の極小現象)の理論的解明。この理論の波及効果はきわめて大きく、素粒子論を含めた多体系への応用、量子ドットにおける観測、いわゆる「重い電子系」化合物の発現など、現代においても非常に重要な基礎概念となっています(参考: 近藤淳教授の業績)。日本人の名前がついた科学用語としては、おそらくもっとも有名な部類じゃないでしょうか。物性系なら誰でも知ってるはず。


土井正男

高分子液体の粘弾性のレプテーション理論 (Doi-Edwards 理論) で国際的に有名な高分子物理学者。この分野では既に de Gennes が貰ってるので受賞の可能性は高くはないかもしれませんが、かなり影響力の大きな成果っぽいので一応あげておきます。


小川誠二

血液中の hemoglobin が酸素と結合する際の磁気特性(スピン数)の変化を磁気共鳴画像法(MRI)で観測する(BOLD法; Blood Oxygenation Level Dependent Method)ことにより、ヒトの脳活動の非侵襲的測定などが可能となることを証明。この方法は磁気共鳴機能画像法(fMRI; functional MRI)と呼ばれ、ヒトの生理的信号を非侵襲的に観測する手段として、基礎研究から臨床医学応用まで幅広く利用されています。


久保亮五 (1920-1995)

言わずと知れた 「線形応答理論」 の確立者。平衡状態に外場が加えられたときの(線形)応答を一般的に求める方法(久保公式 or Green-Kubo 公式)を確立し、非平衡統計力学の発展に極めて重要な貢献をされました。他にも、「ゴム弾性の理論」(参考: 「ゴム弾性」)、「磁気共鳴共吸の一般論」(冨田和久との共同研究;磁性体に振動磁場がかった時の線形応答理論に対応)、「金属微粒子の低温で現れる量子効果としての久保効果の発見」(メゾスコピック物理の草分け)などでも有名です。「線形応答理論」(の一般性を示した功績)は間違いなくノーベル賞クラスですが…授賞前に亡くなられてしまって、残念ですね。


森肇: 一般化ブラウン運動、第2揺動散逸定理、森公式。

松原武生松原グリーン関数。物性理論にファインマンダイアグラムを導入した先駆者。


蔵本由紀

Kuramoto-Sivashinsky 方程式 (振動場の位相不安定性を記述する、時空カオスの基礎方程式)、蔵本モデル(振動子集団の可解模型)、反応拡散系における複素Ginzburg-Landau 方程式の導出など、非線形・非平衡統計力学の分野で世界的に著名な物理学者。

しかし蔵本先生と聞いて何よりも先に思い出すのは、やはり「熱統計力学」の名講義。
僕も、玉尾先生の有機化学の授業(こちらも最高でした)が助手による代講だったときに、工学部4号館から理学部6号館まで全力疾走して、やっとのことで体験することが出来ました。
各節に入る前に、教壇での「語り」が入るんですよね。しかも「本質」を、ほのぼのと。
あれは良かったなあ…。僕が受けた中での、ベスト講義のひとつ。本当に貴重な体験でした。

因みに現在は、北大のCOE特命教授をされています(インタビュー)。数学系らしいので、もう統計力学の講義はされていないのかな。だとしたらすごく残念ですが…。京大での最終講義のpdf が公開されているので、是非ご覧になってください。篠本先生による紹介も面白いです。さすが(笑)。


上田睆亮Edward Norton Lorenz

「カオス」の発見者。それぞれ、「上田アトラクタ」、「ローレンツアトラクタ」と呼ばれて人口に膾炙してますね。初期値のわずかな違いによって、将来の結果に甚大な差を生み出す(バタフライ効果)など、科学・数学だけでなく(科学)哲学にまで大きな影響を与えたという意味で、かなり革新的な発見だと思います。

「いかにも最初にまずできたのはカオス」 (ヘシオドス 「神統記」)


能勢修一 (1951-2005)

分子動力学シミュレーションにおいて、温度を適確にコントロールする方法(Nose-Hoover 法)を提案したことで有名。能勢の方法は、ガラス転移をはじめとする構造相転移の研究などに広く用いられています。学生実験でMD計算したときに存在を知って以来、その評価がけっこう気になっていたのですが…2005年8月17日に亡くなられてしまったようです。残念ですね。


前野悦輝

Sr2RuO4がスピン三重項状態の超伝導体であることの発見/証明とその物性解明。クーパー対がスピン1重項ではなく3重項状態となる超伝導体が存在する、というこの発見は、BCS理論を越える新しい物理を産み出す可能性があり、その意味で(おもに基礎的な見地から)画期的な成果だといわれています。まさか今年取ったりはしないでしょうが、いつかは受賞されるかもしれません。

もしかしたら、(京大関係者には特に) 「エレメンタッチ」 の考案者と言った方が通りがいいかもしれませんね。これを観ながらどんな元素を使おうか考えてる、と何かの講義で仰ってました。多分冗談だと思いますが…(笑)。



# by jazz-photonic | 2006-09-30 23:59 | Science




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